『さなぎの時代』レポート(1)
演劇結社ばっかりばっかりの芝居『さなぎの時代』の公演、無事終了しました。
ご来場いただいた皆さん、本当にありがとうございました!!
お陰さまで、既に再演を希望するお声も多数いただいてはいますが、まずは公演終了ということで、ストーリーに触れてご紹介してみようと思います。
まず、これは毎公演行なっていることですが、主宰鈴木大輔は、前説で舞台の大きさや舞台上のセットを、自分が歩き回りながら話すことによって、視覚障害者のお客さんに空間を認識してもらいます。(昨年の『トイメン』では石津が行なっていました)
前説が終わりBGMが盛り上がってから止まると、お辞儀していた鈴木大輔が、すっと頭を上げます。このとき彼は、“大輔”という存在になり、いつの間にかこの舞台は喫茶店となっています。
ここに、バリアフリー映画鑑賞推進団体“City Lights”の平塚リーダーとして、こんやゆうこが登場してきます。
彼女は、1枚のDVDを取り出し、“大輔”に手渡し、「画面が暗くて地味だが良い作品なので、多くの視覚障害者の人とも一緒に楽しみたいから、音声ガイドをつけてくれ」と以来します。(引き受けてもらった直後、うっかり禁煙の店でタバコに火をつけウェイターに店から追い出されてしまうのですが…)
ここから、その映画作品『さなぎの時代』に、“大輔”が音声ガイドをつけていくという仕掛けで、本編の物語が展開していくのです。
ちょっと陰のあるテーマソングが流れると、まもなく急ブレーキの音と軽い衝突音、そして主人公織笠悠稀の部屋へと変化し、彼のモノローグとなります。
彼を取り巻く物は、闇というには暗くなく、霧や靄というには明るくない、徹夜明けで飛び込んだ映画館のスクリーンのように、ぼーっと薄汚れた“何か”だと言います。
その彼の心象風景を打ち破るようなカーテンを開ける音に続き、母親聡子の明るい声が響きます。
「ただいまの時刻は午前10時なり!ほら、ほっぺたに当たるお日様がわからないの?」
そんな母親に食って掛かる悠稀は、その後のモノローグで、3ヶ月前に、恋人エリカとの待ち合わせに急ごうとしていて車に跳ねられ事故を起こし、全盲になってしまったことを語ります。
この冒頭部分から暫くの間は、なんと、悠稀以外の登場人物の顔には照明が当たらず、判然としないのです。これはもう、前代未聞の照明演出です!
この主人公悠稀役は、稽古が始まった9月時点では悠稀と同じ21歳だった、現役の全盲大学生・大河内聡之。そして、なんと母親・聡子47歳を演じたのは、今回のメンバーの最年少、現在二十歳の某大学の芸術学部生・客演の河村有美さんです。
大河内は、本人は気にしてはいたけれど、周りがタブー視して見て見ぬフリをしてきた恒音性機能障害で「キ・シ・チ・ニ・ヒ・リ」とそれに付随した拗音が不明瞭だったのですが、昨年、あるお客さんから厳しいご指摘をいただいたことをきっかけに、真正面からその発音の矯正に取り組み、見事克服したのです。
その覚悟を持って臨んだ主役でしたから、もちろん演技力の向上にもぬかりはなく、2時間出ずっぱりでの膨大な台詞を、活き活きと語りまくりました。
原作者である私は、最終的に目の前に出現した生身の“織笠悠稀”の存在に、胸を熱くすることとなりました。
細身・中背の河村さんは、大学ではミュージカル関係の勉強をしているらしく、その発表会としてのミュージカルには出演したことがあったそうですが、こんなにはっきりとした台詞がいっぱいあるメインキャストでの芝居はほぼ初舞台だったといいます。
にも関わらず、自分より一つ年上の悠稀の母親役を見事明るく大らかに演じきったのです!
この河村有美さん、私がmixiの演劇関連のコミュで募集して参加してくれたのですが、なんとこれからも「ばっかりばっかりでお世話になります」と言ってくれました!
とても美しい声の持ち主で、ソプラノの歌声も素晴らしいですので、次回作ではその辺りも生かしてもらえるような役を担当してもらえたらと思っています。主宰に頼んでみようっと。(笑)
さて、3ヶ月前の事故のときに「待ちくたびれたから早くきて」と携帯電話で甘えてしまった恋人・エリカは、事故後何度も悠稀に会いにきていたのですが、毎日拒絶されていました。
そのエリカが、悠稀の退院した情報を得て、また今日も面会を申し込んできたというのです。
しかし、香り高いピンクの百合の花束を抱えて現れたエリカとは、そのまま喧嘩別れしてしまいます。彼女の幼いわがままと、失明のショックからまったく立ち直っていない悠稀のわがままが衝突した結果でした。
エリカ役は、22歳の女子大生・田中ゆかりさん。彼女は、ついこの前まで、小さな劇団の主宰だった人で、エリカの描写そのものの、「小柄で茶髪のよく似合う丸顔の女の子」でした。
最初、やはりmixiでの募集を見て連絡をくれたのですが、「福祉的配慮をした舞台に興味があります。」と言ってきてくれたのです。
若いながらも舞台経験は多く、このすぐ後にも予定が決まっているそうで、ばっかりばっかりのメンバーとして残ることはありませんでしたが、「ばっかりファミリーになります」と、この先も出演してくれそうな雰囲気です。しかも、“City Lights”の活動に興味を持ったそうで、今後字幕朗読ボランティアとか音声ガイドにもチャレンジしそうな勢いがあります。
さて、ちょいと長くなってしまいました。この後のストーリー展開と、残りの面子の紹介は、次回のお楽しみにとっておかせてください。
(つづく)
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