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春うらら
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エレベータの恐怖

 アクティブに一人歩きするようになった10代半ば頃からよく観る悪夢があります。

 それは、見知らぬホテルだったり、大きなビルだったりするのですが、その建物のエレベータに乗った私が、行き先ボタンを確認できずにいるうちに箱が動き出し、何回だかわからないところに止まってドアが開き、降りてみても周りの様子がさっぱりわからないというものです。これを何度も繰り返し、途方に暮れているうちに、箱の動く速度がどんどん速くなっていったりするのです。
 想像してみてください、その怖さ…!
 いや、速度が速くなるのは誰にとっても怖いことだろうけれども、高層階の見知らぬフロアに、何の手がかりもなく降り立つ恐怖は、しかし視覚障害者にとっては笑い事で済まされない、現実にもありかねない恐怖なのです。

 現実の世界でいうと、若いうちは4階5階ぐらいまでなら、その恐怖を避けるために階段を使ったりもできましたが、やはり高層階にいくときは無理でしたし、最近では少し膝が悪くて(はい、重みのせいです、ごめんなさい)、低層階への移動でも、ついついエレベータを利用するのですが、自動音声案内が付いていないエレベータにはいつでも大変スリリングな想いをさせられます。

 とはいうものの、現実の世界は、ありがたいことにここ数年でかなりユニバーサルデザイン化され、駅やホールなどの公共の建物を初めとするエレベータには、自動音声案内や点字表示が充実してきていますので、大変助かっています。
 でも、どうせ音声案内を付けるなら、より判りやすい物をつけてほしいというのが人情です。というか、安全性や利便性を考えても、より適切にすべきなのに、ちゃんと一人歩きしている視覚障害者にリサーチしたのだろうかと思うことが多々あります。

 まず、最近車椅子の人たちがバックで出なくても住むように、通り抜け式になった優れもののエレベータが増えているのですが、この場合のメッセージです。
 一番適切に感じたのが、「このエレベータは、乗ったほうと反対側のドアが開きます」という物でした。これは本当に完璧です。
 次に、これに近いくらい良い物としては「奥側の扉が開きます」という物があります。
 困ってしまうのは、「こちら側のドアが開きます」という物です。いちおう、両方のドアのところにそれぞれスピーカーがついているのですが、音の出どころが明確には判らないことがあるのです。人間の耳は、どうやら左右の定位は判別できても、前後に対しては鈍いようです。
 さらにやっかいなのは、ホームと改札を行ったり来たりするだけでなく、全部で3フロアにまたがって移動するタイプの物です。下では入り口A、真ん中では入り口B、上ではまたAというように。これはもう、「こちらのドア」方式しかありません。
 ここまで読んでこられた方の中には、「そんなのドアが開けば判るからいいじゃないか」と言われる方もおられるのではないでしょうか。でも、開く前に判っていればスムーズに行動でき、同乗者の人たちに迷惑をかけずに済むのです。

 もう一つ、音声案内で大事だと思うのは、タイミングです。
 私は、一般のデパートなどのエレベータガールさん方式で、まずは乗っている人に対して、それから乗ろうとする人に対してという優先順位でアナウンスするべきではないかと思います。
 具体的にいうと、ドアが開く瞬間に、そのフロアが何階なのかなどの情報、その後、ドアが開ききったあたりで、そのエレベータの行き先を告げるという順番が望ましいと思います。
 ところが、都営地下鉄三田線の三田駅では、ドアが開いた瞬間に行き先を案内し、動き始めたときに次の到着フロアを告げるのです。
 慣れないうちは、ドアが開いた瞬間に「地下1階、三田線改札口」という言葉が耳に飛び込んできて、「え?さっき乗り込んだところじゃーん!」と驚き、ドア口付近で下りて良いのか箱に戻るべきかとまどい、他の方に舌打ちされたりもしました。
 しかも、このアナウンスのタイミングが、場所によってまちまちなので、さらにとまどうことになるわけです。

 もう、私がよく観る悪夢のような状況になることはかなり少なくなってきているにせよ、音声案内の言葉の選び方やタイミングなどについては、もっと一人歩きをしている視覚障害当事者にリサーチして決めていってほしいと思うのでした。


ながら仕事でもホームページが楽しめる音声ブラウザ・ボイスサーフィン


(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)

by amedia  at 18:21