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春うらら
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バリアが外れていくとき(其の一)

 7月16日から20日まで、一月前にご案内しましたシノハラステージング公演『改造人間哀歌2~星空の約束~』の楽屋と劇場に張り付いていました。
 お陰さまで、連日満員御礼の大盛況で、音声パンフの配布しかしていなかったにも関わらず、全盲のお客さんも5名ほどきてくださいました。
 この場をお借りしてお礼申し上げます。
 実は、私、この公演に声の出演をさせていただいたのです!初恋のヒーロー、仮面ライダー2号・一文字隼人(いちもんじはやと)役の佐々木剛(たけし)さんと、うちの相方の鈴木大輔が共演できるとあってとても喜んでいたら、私まで「声の出演」という形で間接的に共演させていただけたというわけです。
 この公演に関する詳しいお話しは、アメディア発行の姉妹メルマガ「アメディアレポート」の7月28日号でお届けしたいと思いますので、そちらもお楽しみに。

 今回書きたいと思ったのは、この公演の稽古場、公演期間中、および打ち上げの席での、劇団員さんたちと私の関わりについてです。

 稽古場には、4回伺いました。
 他所の劇団に顔を出すっていうのは、なかなか緊張するものです。彼らは皆、視覚障害者と接したことのない晴眼者たちばかりなのですから。
 1度目は、とにかく声の出演で使っていただけるようにお願いしようと思っていたので、とりあえずの顔見せを兼ねて、通し稽古を見せていただいたのです。
 この日は、実際この舞台に参加する我が相方の鈴木大輔が私を、自分のマネージャー、兼パートナー兼自分のところの劇団員として、皆さんに紹介してくれました。
 どうやら、この日より前から、鈴木は私のことを紹介していてくれたらしく、稽古場の片隅の椅子にかけるやいなや、この劇団の看板女優の百合香さんが飛んできて、とても明るく丁寧に挨拶してくださいました。
 また、忙しい最中でしたが、この劇団の主宰にして脚本・演出家の篠原さんも、私を軽んじたりはなさらず、とてもフレンドリーに声をかけてくださいました。
 ただ、全体的には温かく迎えてくださっていたものの、まだ少し遠巻きに見られている感じがしました。
 そこで、通し稽古終了後、篠原さんにこっそり「皆さんに、音声パンフレットCDにお声を録音させていただけないか伺いたいんですが」と切り出すと、稽古のダメ出しの後に、ちゃんと私から皆さんに話をさせていただける時間をとってくださいました。
 「鈴木が出演するということで、私と同様に視覚に障害のあるお客さんが何名かいらっしゃると思います。その人たちに、少しでも理解していただけるツールとして、
CDによる音声パンフレットを作ろうと思っています。つきましては、音の顔写真の変わりに、お一人づすお声を録音させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
 まぁ、そんなことを話したと思います。すると、皆さんから、「了解!」との嬉しい声が帰ってきました。
 この日は、「後日機材を持って改めて録音しにきます」と告げてそのまま帰りました。

 すると翌日、篠原さんから鈴木を通じて連絡があり、「パニックを起こした人々のガヤの中の一人にと思ってたけど、ラジオのキャスターの声を」という嬉しいお申し出をいただきました。さっそく台詞をテキストデータでお送りいただき、自動点訳すると、鈴木との掛け合いで1分半ほどの会話になっていました。
 しっかり読み込んで、翌日再び稽古場へ。皆さんより1時間ほど早く到着し、いただいた台詞を、ちょいとNGを出しながらもなんとか録音していただきました。
 編集したのを聞かせていただくと、我ながらなかなかの女性キャスターっぷりです。「これならちゃんとラジオに聞こえるね!」と篠原さんからも安心の一言をいただきました。

 その翌日、三度稽古場へ。このときには、PTR1とマイクを持っていき、キャストインタビューに成功しました。
 もちろん、あの憧れの佐々木さんからも、とても渋いお声でのメッセージをいただけました。(普通に入力できるなら、ここにハートマークを付けたいところですが…)

 そしてまた数日後、舞台の仕込みの日に、もう一人の声の出演(というとまるで私がそのお方と同列みたいになっちゃって穴がなくても掘ってでも入りたいくらいの想いに駆られるのですが)、悪役声優でおなじみの渡部猛(わたべ たけし)さんの、
悪の首領の声の収録があり、そこにお邪魔させていただき、音声パンフ用の録音もさせていただきました。快くお引き受けくださった渡部さんは、短めの一言ですが、大サービスの悪役声を聞かせてくださいました。間近で聞く迫力の悪役声に、私はしびれまくってしまいました。

 この夜、他のお客さんたちに配るパンフレットと同じ内容を鈴木が朗読して録音し、材料が出揃ったところでぼちぼちと音声パンフの編集を始めながら、mixiの日記でその作業について書いたら、篠原さんからのコメントが入りました。
 「これ、開場してお客さんが入ってくる間のBGM代わりに、場内に流しましょうか」
 考えてみれば、佐々木さんのお声も、渡部さんのお声も入っているのです。確かにこれは、インパクトがありそうです。
 でもそれより何より、観劇後自宅に帰ってからでないと聞いてもらえないと思っていた音声パンフの内容を、視覚障害者自身も開演前に聞くことができるという事態に、私は大喜びしてしまいました。
 そこで、初日には視覚障害のお客さんはいらっしゃらないから2日くらいかけてゆっくりやろうと思っていた作業を、大急ぎで巻きまして、夜なべで完成させたのでした。
 今までそんな機会がなかったため、劇場のバリアフリーを意識していらっしゃらなかった劇団の主宰・篠原さんが、はっきりこちらを向いてくださったことを感じた瞬間でした。

(来週に続く)


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(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)


by amedia  at 16:18