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春うらら
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可動式ホーム柵の重要性-尊い命を護るため(前編)

 9月13日の夕方、東横線多摩川駅のホームで、エレベーターから降りてきたおばあさんが車椅子ごとホームを滑り、線路に転落してしまい、頭を強く打った結果、翌日亡くなられたという痛ましい事故が起きました。
 実は、同じ駅の同じホームで、2年前にも車椅子のおばあさんの転落事故があったいうのですから驚いてしまいます。なぜ東急は、2年前の事故の直後に対策を練ろうともせずに再び同じことを繰り返してしまったのでしょうか。
 皮肉なことに、この同じ駅でも、目黒線のホームには可動式ホーム柵が設置されているのですが…。

 私たち視覚障害者は、とかくホームからの転落というと自分たち視覚障害者特有の事故だと思いがちですが、こんな事故も起きてしまっているわけですね。
 しかも、ホームからの転落事故は、何も障害者に限ったことではありません。2001年の新大久保駅の事故など、健常者の転落も少なくないということです。
 かつての私は、傲慢にも、積極的に一人歩きしている視覚障害者なのに一度もホームから転落したことがないのは、私自身が人一倍注意を払って歩いているからだと公言していたのですが、数名の転落経験者の知り合いから、ホームでめまいを起こしたとか貧血を起こしたのだという話を聞き、ぞっとしました。いくら健康だからと言っも私も45歳です。いつそんな状況にならないとも限りません。
 などとつらつら考えていて、やはりホームと線路を隔てる可動式ホーム柵は、元来必須な物なのだと感じました。
 「元来」と表現するとちょっと大げさに感じるかもしれませんが、ホームから線路までの高さ(いやむしろ深さ?)が1.2メートルあるというのですから、普通の橋として考えればぜったい欄干が必要になるはずです。ただ落ちただけでも怪我するし、打ち所が悪ければ今回の多摩川駅で転落したおばあさんのように死に至ることもあります。転落しただけでもこれほどの危険がある上に、タイミングが悪ければ寸分違わずその場所に突進してくる怪物=電車という存在も加わるのですから、鉄道の長い歴史の中、近年までそういう対策が成されてこなかったことのほうが不思議です。

 そんなことを思いながら、稼動柵の普及状況などをwikiで調べていたら、面白い記述に出会いました。
 なんと、昭和初期・中期に鉄道技術者としてデゴイチの設計に関与し、後に新幹線計画の実現に大きく貢献したという島秀雄さんという方が、既に戦前からホーム柵の設置を主張していたというのです!
 それから数えて60年近く経って、ようやく実現し始めたというのですから、なんとも気の遠くなる話でした。ようやく技術的に可能になってきたということなのかもしれませんが、それにしてはその後の普及が遅いようにも思えます。また、技術者の方も懸念してきたことだったホーム柵を、もっと簡易な形ででも早期に実現されていれば、尊い命をいくつ救ってこられたのかと思うと、なんだかやりきれない想いにもかられます。

 とはいうものの、国内のホーム柵やホームドアも、2009年秋現在、かなり増えてきてはいますので、全線設置されている線のみ列挙してみます。

東急目黒線、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス、名古屋臨海高速鉄道西名古屋港線、札幌市営地下鉄東西線、埼玉高速鉄道線、東京地下鉄丸ノ内線・南北線・副都心線、都営地下鉄三田線、横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン、名古屋市営地下鉄上飯田線、京都市営地下鉄東西線、大阪市営地下鉄今里筋線、福岡市地下鉄空港線・箱崎線・七隈線

 この他にも、来年以降全線ホーム柵が設置される線がいろいろあります。
 極めて朗報だと感じているのが、JR山手線で、2017年までに29駅全部に可動式ホーム柵が付けられるということです。まず手始めに、来年度、恵比寿駅と目黒駅に付けられるそうなので、今からとても楽しみです。

 とはいえ、まだまだ地方の小さな駅などはどうなるか分かりません。駅員さんのいない駅を利用されている方などは、ずいぶん不安な想いをなさっていることでしょう

 鉄道各社には、人の命の重みを感じていただいて、今後真剣に取り組んでいっていただきたいものです。

 次回は、稼動柵設置のネックになることとして、なんとこの私にしては珍しく、社会のあり方についてまで問うてみたいと思っています。

(つづく)


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(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)


by amedia  at 16:19