大雑把な移動と細かい移動-参宮橋駅近くにて
よく遠出をしたときなどに、「んまぁ!!お見えにならないのに、よくそんな遠
くからいらしたわね!偉いわぁ!」と関心されてしまうことがあります。
でも、偉くもなんともないんです。一人歩きに慣れている視覚障害者の場合、駅
構内の様子は、ある程度、経験と感で理解できることが多いし、自力でわからなく
ても、駅員さんに誘導してもらっちゃうと言う必殺技があるので、平気なのです。
しかも、どんなに遠くへ行こうとも、その移動の間は、ただ乗り物に運ばれて行く
だけなのですから。
また、目的地の最寄駅から、目的地までの移動は、ちゃんと説明できる人に「左
に折れて、真っすぐで、右側を歩いて行って、何番目を右に折れて、ガソリンスタ
ンドがある。その先隣です。」などと説明されれば、だいたい近くまでは行けます。
それよりも、そういう大きな移動ではなく、目的とする建物を限定すること、そ
れが判ったとしても、その入り口の場所を限定すること、それも判って中に入れた
としても目的の部屋を探すこと、さらに、その部屋に入ったとしても自分が座るべ
き椅子の場所と向きを把握すること、と、ドンドン小さい単位での移動になるけれ
ど、そちらの方が、遠くの駅へ行くことより、遥かに難しいようです。
もちろん、現実的に言えば、部屋の中に入ってしまえば、誰か必ず誘導してくれ
るので、そこはあまり問題ではないのですが。
先日も、サークルの集まりで、小田急線参宮橋駅で待ち合わせをして、オリンピッ
ク記念青少年センターに行くことになっていたのですが、待ち合わせより遥かに早
く到着したので、近くのマクドナルドで時間をツブソウト歩いていました。けれど、
以前何度か連れていってもらっていたのに、ちゃんと自力で行けるように憶えてい
なかったので、建物そのものが判らないのです。「ここのような気がするけど、B
GMがそれっぽくないな」とか、「こんなにきたっけかな」とか、入り口っぽいと
ころが閉鎖的な雰囲気だから違うかな」なんて想いながら、行きつ戻りつすること
5分くらい。もちろん人は行き交っているから、誰かに聞けば良いんだけれど、な
んとか自力で探したい気持ちになっていました。でも、さすがに心細くなり、とい
うより、実はお腹がグーグーなったりしていたので、若い女の子の声が聞こえたら
声掛けてみようと決めました。(ちなみに、私は妖しいオヤジではなく、普通のお
姉さんですけど)
すると、きました、きました!楽しげに笑い合いながら、高校生くらいの雰囲気
の声の持ち主の二人連れ!
「すいませーん!マクドナルドの入り口まで一緒に行っていただけませんか、う
まく探せないんですけどぉ」
とせいいっぱい彼女達の雰囲気に近づこうと言う無駄な努力を口調に込めて語り
掛けると、快く引き受けてくれ……。
と、そのとき!
「あ、めえたん!!(私のニックネームです)」と言う、やはり若い女の子の声。
「あ、大丈夫です、連れですから。」
そう言った主は、待ち合わせていた人ではないけれど、同じサークルの23歳く
らいの女子でした。
慌てて、少女達にお礼だかお詫びだかわけのわからなくなった挨拶をして、私は、
23歳女子と一緒に、マクドナルドに入っていったのでした。
そして、まだ付き合いの浅い彼女が不思議そうにしていたので、このコラムの冒
頭で書いたような説明、つまり、建物を、その入り口を認識するのが難しいのだと
言う話を語り、また一つ理解してもらうことができたのでした。