小田急線での嬉しいふれあい
ITが確立してきた現在、日常生活の中で「見えたらよかったのにな」と思うシチュエーションはほとんどありません。
まぁ、宝塚ファンとしては、日ごろ歌や音楽や台詞やステップの音でも十分浸りきっているのですが、やはりきらびやかな舞台を目にしたいと思うことがないわけではありません。とはいえ、自分が舞台に立つことに関しては、もう視覚障害の熟女、もとい、中年おばさんの役に徹しているのでそれなりに満足はしています。
いずれにしても、今の私にとって視力という物は、「まぁあったら便利だろうね」といった程度の物です。(なんて言ってて、ある日突然見えるようになってたら狂喜乱舞しそうですが(笑))
そんな私ですが、本当に「この瞬間、見えてたらな」などと思うことが、たまーにあります。
それは、親切な方に声をかけていただいたときです。乗り物などで座席を譲ってくださろうとする方の様子が、声だけでは図りかねることがあり、本当はとっても疲れているお顔だったらどうしようなどと躊躇することがあるのです。基本的にはありがたく座らせていただくことが増えてきているのですが、やはりとても気になります。また、譲っていただいた後でも、その方が降りていかれるときや、反対に私が降りていくときに、一言お礼を言いたいのに、こちらから確認することができないのは、申し訳なさすぎて、ちょっと辛いと思うのですが、よくよく考えてみたら、自分が晴眼者だったらこんなシチュエーション自体がないんですよね。ある意味凄く矛盾したことなのですが、変に悩んでしまいます。
昨日こんなことがありました。
昨日はちょっとした記念日だったので、久々に新宿のデパ地下で美味しい物を沢山買い込み、夕方のラッシュ時に小田急線の急行に一人で乗り込んでいました。
ぎゅうぎゅう詰めの人の合間に大荷物を持って変なかっこうでやっと立っている状況のとき、マナーモードにし忘れてた携帯が「旦那さんから電話だよーっ!」(着信ボイスです)と叫びだしたのです。恥ずかしいのなんので、必死に携帯を引っ張り出して通話ボタンを押したものの、耳に持っていくのが至難の業!ようやく一言二言会話して切ると、こんどはしまうのにえらく難儀してしまいました。やっとの想いでしまったと思ったとたんに、買い物袋の一つが床に落下!!
(ひぇーっ!この中には京都の老舗の出汁巻きと鰻巻きが入ってるんだよぉ!誰かに踏まれたら大変だぁ!!)
気持ちはあせるけれど、かがむにかがめない。
と、その荷物側に立っていたご婦人が「あらまぁ、大変!拾ってあげましょうね」と言って、なんとその玉子焼きの袋を拾い上げて手渡してくださったのです!本当に嬉しくて、何度も何度もお礼を言いますと、 「だって、あなた杖も持ってらして、大変じゃないの。私は身軽だったから拾って
あげただけなのよ」
と、優しいお声で言ってくださいました。
その後、何度かドアの開閉があるうちに、人にもまれ、かなり移動してしまったので、どちらかが降りるときにご挨拶できなくなってしまうんじゃないかと、いつもの気まずい感情がわきあがってきていました。
でも今回は、嬉しいことに、私と同じく新百合ヶ丘で急行を降りられたのです。しかも、降りるときにも私が難儀していると、「先程の者ですけど、ここで降りられるの?」と声をかけてくださり、一緒に降りてくださったのでした。
もちろん、改めてお礼を申し上げ、気持ちよく別れを告げることができたのでした。
込み合った電車の中、私の肩を鞄置き替わりにしたサラリーマンらしき人が不幸になればいいなどとは言いませんが、この親切なご婦人に幸いあれと思った、うれしいひとときでした。
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