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春うらら
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悪気はないから困っちゃう

 たまに、「目が見えなくて良かったと思うことはありますか?」という面白い質問を
受けることがあります。この質問、不快に思う人もいるかも知れないけれど、
私は悪くない質問だと思っています。
だって、私には本当に「これは良かったことだ」と思えることがあるからです。
 人間関係が殺伐としているなどと言われる現代の都会にあっても、
自分が障害者だったからこそ、声を掛けてくださる方の心の温かさに触れることが
できるからです。
慣れていない駅などで掛けられる「お手伝いしましょうか」の声に、差し出される腕に、
どれだけ救われてきているかと思うと、感謝でいっぱいになります。
 けれど、その一方で、勘違いや思い込みでの親切には、困ることしきりでもあるのです。
先日も、我が家の最寄駅の売店でそんな想いをしました。
 私は、ドリンク剤とお水とスティックタイプの喉飴を買いました。
周りには、買い物をしようとしているらしい人達が数名いましたが、
私は自分でほしい物を取って会計することはできないので、
売店のおばさんに口頭で伝えて取ってもらうしかないのです。
人より少しだけ時間がかかってしまうのが、申し訳ないなと思いつつ買っているのですが、
このおばさんが親切過剰な人で、余計に時間がかかってしまうのです。
「飴はすぐなめるの?」
と聞かれたので、私は袋に入れるか入れないかの判断材料だと想い、
「はい、すぐなめますから……」と答えかけました。
その後に続くはずだった言葉は、「そのまんまでいいです」だったのですが、
かぶせてきたおばさんの言葉は想像の範囲を超えていました。
「それじゃ、開け口に切り込みを入れましょうね。」
驚いた私は、「そのまんまでも、切り口は触れば分りますから」という言葉が
出てこないのです。「え?あ?だ、大丈夫です」などとあわあわしていると、
「いいのよ、遠慮なんかしなくても。おばさんがちゃんとやったげるから」と、
すっかり親切に酔いしれ、『お待たせいたしました、電車が参ります』のアナウンスが
流れ初めているのに、「あら、こういうのは一つ目のを出すのが難しいのよね。はい、
お嬢さん、手を出して。あなたの手の上に、一つ目のを置きますよ。」ときたのです。
しかたなく手を出しながらも、周りが気になってたまりません。お金を払い、
品物全てを受け取って、入線してきた電車に乗り込んだときには、
冷や汗でじっとりしていました。
この歳で「お嬢さん」呼ばわりされたのは嬉しくなくもないのですが、
一種の子供扱いの延長みたいで、すっきりしません。
それより何より、他の人たちは、みんな、ちゃんと買い物して電車に乗れたのだろうかと思うと、
本当に落ち着かない気持ちになりました。

 またあるときは、知人の家に向かって歩いていると、
いきなり通りがかりのおばあさんに「あなた、そっちは病院じゃありませんよ。
こっちへいらっしゃい。」と手を引っ張られました。
障害を持っている人が、一人歩きしてまで出向く先っていうのは
病院以外にはないのだと思い込んでいたに違いありません。

 他にも、危険な例としては、エスカレーターに乗りかけて動き出したあたりで、
「あなた、そこはエスカレーターですよ!危ないじゃないですか!」と言って、
後ろから服をつかまれたことがあります。
いつもなら、勘違いしている親切屋さんには、(この人には悪気はないのだから)と自分に言い聞かせ、
邪険にしたりしないように気をつけているのですが、このときばかりは、「掴まないでください!」と
叫んで、服をもぎ取ってしまいました。怖かった!!

 こんなことに出会う度、人の親切心を傷つけることなくお断りする良い方法は
ないものかと途方にくれてしまう私なのです。


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(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)

by amedia  at 16:08