百聞は一触にしかず
ずっと以前にも、視覚障害者にとっての博物館見学に関して書かせていただきましたが、先日改めて感じるところがありましたので、再び書いてみようと思います。
先日訪れたのは、兵庫県宝塚市にある「手塚治虫(てづか おさむ)記念館」でした。
元々は、宝塚歌劇のファンの私ですので、今回も花組で公演中の壮大なミュージカルファンタジー『太王四神記(たいおうしじんき)』を観に行き、もちろん大変感動したのですが、漫画好きの同行者にも十分宝塚界隈を楽しんでもらおうということで、大劇場から歩いて5分程度のところにあるこの記念館に立ち寄ったわけです。
当然ながら、私も手塚先生の作品には、TVアニメやラジオドラマといった形で十分に触れて育ってきた世代ですので、興味がないはずもなく、わくわくしながら訪れたのです。
こぢんまりとした建物の前庭の地面には、手塚先生の作品中に出てくる様々なキャラクターの、先生が想定されたとおりの手形や足形が掘り込まれていて、私はしゃがみこんでアトムやブラックジャック先生の手形に自分の手を当ててみて、にこにこしてしまいました。
中に入り、入館料をチェックすると一人500円だということです。それで二人分払おうと思っていたのですが、障害者手帳があれば無料になるとのこと。さらに、同行者一人も、付き添いということで無料になったのです。料金がかからないのはちょっと助かりますが、ここで私は少し嫌な予感がしました。
入ってまもなく、その予感が的中していることに気づきました。b1から2階までの3フロアで構成された館内は、やはり、触れられない物、眼で見るだけの物のオンパレードです。
予算的なことなどもあるでしょうし、一般のお客さんにはそうとう満足できる展示物に違いないのですが、入館料は一般の人と同じように払ってもまったくかまわないので、あちらこちらにキャラクターの等身大レプリカなどを置いて、それに自由に触れたりしたらどんなに良いだろうと思ってしまいました。
現状で私が一番楽しめたのは、1階少し奥にあるスペースで、在りし日の手塚先生のインタビューや、藤子不二雄A先生や故・石ノ森章太郎先生からのコメントなどの映像を流しているコーナーでした。そこには椅子が数脚置いてあり、じっくり観ることができるようになっていました。
次回訪れたときに、まだ展示物に変化がないようなら、今度は私だけそこに腰を据えて、じっくり先生方の話に耳を傾けて楽しんでみようかなと思った次第です。
一方、宝塚駅までの帰り道では、思いがけない収穫もありました。それは、宝塚大劇場から駅まで続く一段高くなった道、「花の道」の途中に、等身大のオスカルとアンドレ(池田理代子原作の宝塚ミュージカル『ベルサイユのばら』の登場人物です)の寄り添う像が飾られていて、じっくり触ることができたことです。実は、私はここで触るまで、オスカルの髪の毛があんなに長いとは想像できていなかったので、改めて驚いてしまいました。よく考えてみれば、アンドレがオスカルのことを思って歌う歌に「♪ブロンドの髪翻し」とあるのですから、ある程度の長さは想像していてしかるべきだったのに、彼女が軍人だというイメージが強くて、かってに短髪だと思い込んでいたんですね。
そして、愛しげにオスカルの腰に右手を回してたたずむアンドレ!泣きそうに感動しました!
これは一つ、手塚記念館にもお手紙を書いて、お願いしてみようかななどと、改めて思った次第です。
以前、ご紹介した、盛岡にある私設博物館「桜井博物館」の館長で、元岩手県立盲学校で教鞭を取っておられた桜井政太郎先生がおっしゃっておられた「百聞は一触にしかず」という言葉を、身を持って感じることのできた瞬間でした。
桜井先生は、ご自身も全盲で、触ることの大切さを感じて生きてこられ、そして退職後、それまでに収集してきたあらゆる物を、ご自宅を改造して展示し、「桜井博物館」として無料で観覧できるようにしてくださったのです。 私も一度伺い、10億分の1の太陽と太陽系の惑星それぞれの大きさの比較に感動
し、鮫の歯の鋭さとその機構におののき、寝殿造りの貴族の屋敷の模型に夢を広げてきました。
「桜井博物館」には休館日というのは特にないそうですが、予め電話で予約を入れてくださいとのことです。
申し込み・お問い合わせ 019-662-4172
また、こちらのサイトで、詳しい紹介があるようですので、ご参考になさってください。
http://www.bunkanken.com/archive/today_universal/uni_sakurai1.html
ユニバーサルミュージアムに興味を持ってくださる皆さんには、ぜひ一度は訪れていただきたい博物館です。