メディア変換の効用-夏休みの読書の奨め
「メディア変換」といっても、コピーするとかそういう単純なことではないんです。
日本語版のハリー・ポッターの最終巻が発売になり、待ってましたとばかりに書店に走った人は多いことでしょう。今は、スキャナとOCRソフトを使って、とりあえず読書をすることができますから、音訳・点訳が上がる前にザザッと楽しめます。私の周りにも発売初日にgetした視覚障害者の友達がいました。
いっぽう、長い本を読むのは苦手という人の中には、映画化を心待ちにしている人も少なくないでしょう。そんな人は、もう2年くらいは待たないと結末にたどり着けないということになりますが、それでもネタバレ発言に必死に耳をふさぎながら、映画の完成を待つのでしょう。
ハリー・ポッターシリーズに限らず、小説から映画へ、小説からアニメへ、漫画からアニメへ、等々、メディア変換も多様化しています。 また、晴眼者の方で、「小説はどうも…」という方が、ある作品を漫画で楽しめるようにすることを、最近では「コミカライズ」などというようになり、個人のニーズに合った作品鑑賞の幅が広がってきました。
このように、複数のメディアで世に出てくる作品が増えている中、視覚障害者として注目したいのが、「ノベライズ」というメディア変換です。漫画やアニメ、映画などのビジュアル的要素の強いメディアで
初登場する作品たちは、面白そうな内容の物があっても、私たち視覚障害者が十分に内容を把握するには至らないことが多いのです。それを、小説という形に変換してくれる「ノベライズ」により、
スキャナとOCRでも、音訳・点訳でも、とにかく読むことができるようになります。
ノベライズ担当者の文章力と感性に追うところが多いので、その出来・不出来の違いは出てくるものの、
誤解のない形でストーリーを把握することはできるわけです。 視覚障害者にはお馴染みの「ないーぶネット」にも、そうしたノベライズ本の点字データが多く蓄積されているので、私は大いに活用しています。
そんな私が最近最も楽しんでいるのが、海外TVドラマの人気シリーズ「24-TWENTY-FOUR」のノベライズです。友人に勧められて読み始めたこのシリーズは、アメリカのCTU(テロ対策ユニット)ロス支局のチーフ捜査官ジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)が、死に物狂いで活躍するシリーズです。着うたのCMで「俺はジャックバウアー、なんだかんだ死なない♪」と歌っていたのを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。元来はファンタジーやSFのほうが好きな私ですが、このスリルとサスペンスとアクションと熱さに満ちた作品には文句なくはまりました。 ドラマでは、リアルタイムで時間が流れていくようにできていて、1回1時間で、1シーズン24回、つまりストーリー上は24時間きっちりで収まるようにできているのです。 ノベライズでも、これに準じていて、一つの章は1時間分ずつでできていて、小見出しも全て「何時何分」という形で構成されています。しかも、どの章もラスト近くにどんでん返し的な盛り上がりが作られているので、読書を中断しづらいことこの上ない作品なのです。
次に、この小説の元になっているTVドラマを観たくなり、レンタル屋さんに走って観始めたら、これがまた、ノベライズ版でストーリーを知ってるはずなのに、止められないのです。
音声ガイド付きの映画を観る機会が増えていますが、こうしてノベライズを読むという手段で、ビジュアル的メディアを、少し違う角度から触れていくというのも、新たな楽しみになるのではないでしょうか。 これ以外でも、漫画→アニメ→小説という形で、私たち視覚障害者が楽しめるところに近づいてきてくれた作品はいろいろあって、「ワンピース」「ハンター×ハンター」「鋼の錬金術師」「ガンダムseed」など、私もずいぶん読みふけったものです。 夏休みも半ばに差し掛かってきた昨今、 学生の皆さんはそんな読書にはまってみるのも良いのではないでしょうか。楽しい本を読めば、読書感想文を書くためのパーも生まれてきますよ。「褒められる感想文」を目指すのではなく、
「友達も先生も、その本を読みたくなるような、感想付き紹介文」を書くつもりで、気楽に感想文を書いてみましょう。
もちろん、大人の皆さんも、どうぞこんな余暇の楽しみ方にはまってみてください。
なお、「ないーぶネット」の利用については、お近くの点字図書館にご相談ください。
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