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春うらら
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素敵な美術館-「割引」で逃げずに誰にでも……

 つい先日、友人と二人で、湯治(?)に行ってきました。
 行った先は、栃木県の那珂川町にある「那珂川苑」というところで、本当はこの
宿の素晴らしさについてもじっくり書きたいところですが、今日はこの宿から近い
美術館についてお話したいと思います。

 那須高原の入り口であるこの辺りは、既に山坂の多い場所なので、宿の周辺をちょっ
と移動するにもまるでミニハイキングです。
 昼食を取りに降りたハム工場直営のレストラン『巴夢(はむ)』からその美術館
までは、1本道を選び違えたこともあり、なんと、えっちらおっちらと1時間ほども
登山(?)することとなってしまいました。
 でも、疲れが一気に取れるほど、素敵なところでした。
 絵本作家いわむらかずおさんは、この丘に農場と美術館を作り、生き物達と自然
と人間を慈しみつつ、暮らしておられます。その美術館が『いわむらかずお えほ
んの丘美術館』なのです。
 木の香りと感触の暖かい建物の1階が展示室になっていて、壁際に、氏の作品で
ある絵本や資料がびっしりと並べられています。この部屋の何箇所かには木のテー
ブルと椅子が置かれていて、座って絵本を読めるようにもなっています。
 私は、この椅子の一つに座り込み、友人に数冊の絵本を、絵の説明を織り交ぜつ
つ朗読してもらいました。いわむら氏は多くの作品を描かれておられますが、中で
も、「14ひきのねずみ」シリーズと「カルちゃんエルくん」シリーズは有名で、
幼年向きの読み聞かせの会などでは取り上げられることも多いと聞いています。読
んでもらってみると、確かに幼年向きではあるのですが、一つのストーリーのある
詩としても楽しめるような、胸の奥に「きゅっ」とくるような作品達でした。
 でも、私に読んでくれてばかりいては、友人がゆっくり見学することができない
と思い、一人で回ってくることを勧めました。すると、程なく戻ってきて、私の手
に何かを渡してくれたのです。それは、なんと点字本だったのです!!絵本でこそ
ありませんでしたが、とても楽しい、いわむら氏の書かれたエッセイ集2冊でした。
見てみると、これは、茨城の点字図書館で点訳された物で、確かめてはいませんが、
もしかしたら寄贈本だったのかもしれません。
 で、私がとても嬉しかったのは、その点字本をしまいこんだりせずに、展示室に
普通に置いておいてくださったということなのです。
 日々の暮らしの中で触れ合う自然や動物達のことを書いたこのエッセイには、絵
本のネタになっていると思しきことがぎっしりと詰め込まれていて、今度は、私が
友人に読んであげることとなり、それを聞いた友人がその内容に近い絵本を持って
きて読んでくれるという、楽しい「読み合いっこ」のひとときとなったのです。
 900円の入館料には障害者割引などはなかったのですが、こんな嬉しい展示物
があったり、木の床にはまったく段差が無くアップダウンの移動は全てスロープに
なっていたり、ゆったりとした障害者用トイレが設置されていたりと、個人の美術
館としてはこの上もないような配慮が随所に成されていたのです。
 こういったところにも、いわむら氏の暖かさが感じられたのです。
 日によっては、いわむら氏ご自身による絵本朗読会なども開かれているそうで、
次回はぜひそんな日に再訪できるように計画を立てたいと思いました。
 もちろん、帰りには、自分達の朗読のネタにもしたいということもあって、「カ
ルちゃんエルくん」の絵本を1冊買ってきました。これから、点訳して、おはなし
会に備えたいと思っているところです。

 追伸 那珂川苑もレストラン『巴夢』も、リーズナブルなのにとても美味しいお
食事を出してくれてましたので、美術館と共に、URLを掲載しておきます。お近
くにお越しの際は、ぜひ行ってみてくださいね。

いわむらかずお えほんの丘美術館
http://www.ehonnooka.com

栃木県障害者保養センター那珂川苑
http://www10.ocn.ne.jp/~nakagawa/

田舎レストラン巴夢(はむ)
http://www.mirubenet.com/gourmet/hamu/


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(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)


by amedia  at 18:21  | Permalink

人の温かさ

今回の福祉コラムを読んで、わたしも同じ事を感じる事があります。例えば、酒に酔って歩いていて、線路に落ちそうになったとき、「あぶないですよ」と後ろから声をかけてくれました。そして、声をかける側も、視覚障害者の事をよく見るのでは?と思います。わたしは、両眼全盲ですが、左目がしっかり開いているので、怖く感じるらしく、わたしに声をかけてくれる人は、女性かやくざふうの人が多いです。そうそう、荷物を整頓していると、「手伝います」と言いながらせっかく入れたものをまた出された頸肩もあり、困りました。わたしは、短気な人間なので、「自分でやれます、せっかくいれたので」と言って、その手をふりほどいた事がありました。だから、エスカレーターに乗ろうとしたときに、後ろから服をつかまれたら、「つかまないでください」と言って、ふりほどくのは、悪い事ではないとわたしは思います。

齋藤勝利

by amedia  at 18:19  | Permalink

悪気はないから困っちゃう

 たまに、「目が見えなくて良かったと思うことはありますか?」という面白い質問を
受けることがあります。この質問、不快に思う人もいるかも知れないけれど、
私は悪くない質問だと思っています。
だって、私には本当に「これは良かったことだ」と思えることがあるからです。
 人間関係が殺伐としているなどと言われる現代の都会にあっても、
自分が障害者だったからこそ、声を掛けてくださる方の心の温かさに触れることが
できるからです。
慣れていない駅などで掛けられる「お手伝いしましょうか」の声に、差し出される腕に、
どれだけ救われてきているかと思うと、感謝でいっぱいになります。
 けれど、その一方で、勘違いや思い込みでの親切には、困ることしきりでもあるのです。
先日も、我が家の最寄駅の売店でそんな想いをしました。
 私は、ドリンク剤とお水とスティックタイプの喉飴を買いました。
周りには、買い物をしようとしているらしい人達が数名いましたが、
私は自分でほしい物を取って会計することはできないので、
売店のおばさんに口頭で伝えて取ってもらうしかないのです。
人より少しだけ時間がかかってしまうのが、申し訳ないなと思いつつ買っているのですが、
このおばさんが親切過剰な人で、余計に時間がかかってしまうのです。
「飴はすぐなめるの?」
と聞かれたので、私は袋に入れるか入れないかの判断材料だと想い、
「はい、すぐなめますから……」と答えかけました。
その後に続くはずだった言葉は、「そのまんまでいいです」だったのですが、
かぶせてきたおばさんの言葉は想像の範囲を超えていました。
「それじゃ、開け口に切り込みを入れましょうね。」
驚いた私は、「そのまんまでも、切り口は触れば分りますから」という言葉が
出てこないのです。「え?あ?だ、大丈夫です」などとあわあわしていると、
「いいのよ、遠慮なんかしなくても。おばさんがちゃんとやったげるから」と、
すっかり親切に酔いしれ、『お待たせいたしました、電車が参ります』のアナウンスが
流れ初めているのに、「あら、こういうのは一つ目のを出すのが難しいのよね。はい、
お嬢さん、手を出して。あなたの手の上に、一つ目のを置きますよ。」ときたのです。
しかたなく手を出しながらも、周りが気になってたまりません。お金を払い、
品物全てを受け取って、入線してきた電車に乗り込んだときには、
冷や汗でじっとりしていました。
この歳で「お嬢さん」呼ばわりされたのは嬉しくなくもないのですが、
一種の子供扱いの延長みたいで、すっきりしません。
それより何より、他の人たちは、みんな、ちゃんと買い物して電車に乗れたのだろうかと思うと、
本当に落ち着かない気持ちになりました。

 またあるときは、知人の家に向かって歩いていると、
いきなり通りがかりのおばあさんに「あなた、そっちは病院じゃありませんよ。
こっちへいらっしゃい。」と手を引っ張られました。
障害を持っている人が、一人歩きしてまで出向く先っていうのは
病院以外にはないのだと思い込んでいたに違いありません。

 他にも、危険な例としては、エスカレーターに乗りかけて動き出したあたりで、
「あなた、そこはエスカレーターですよ!危ないじゃないですか!」と言って、
後ろから服をつかまれたことがあります。
いつもなら、勘違いしている親切屋さんには、(この人には悪気はないのだから)と自分に言い聞かせ、
邪険にしたりしないように気をつけているのですが、このときばかりは、「掴まないでください!」と
叫んで、服をもぎ取ってしまいました。怖かった!!

 こんなことに出会う度、人の親切心を傷つけることなくお断りする良い方法は
ないものかと途方にくれてしまう私なのです。


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(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)

by amedia  at 16:08  | Permalink

朗読会やります!

 昨年12月に、初めて一般の劇団のメンバーとして舞台に立った私ですが、
今度は同じ劇団のメンバーと共に、小さな朗読会を行なうことになりました。
 せっかくなので、読者の皆さんにもお知らせしようと思います。
今、がんばって稽古中なのですが、
ちょっと精神的なプレッシャーにめげそうな今日この頃です。
その理由については詳細な情報を載せた後に少し書かせてください。
 まずは、チラシより。

演劇結社 ばっかりばっかり           
朗読会朗 定~ROU-TEI~
ご飯があって味噌汁があってお新香があってそこにつけるおかずが変わっていく。
 それが定食
ばっかりばっかりの朗読会はそんな定食スタイル。
A・B・Cと回毎に一部演目が変化いたします
(ただしメニューは『料理長のおまかせ』にさせていただきます。)

出演食材
推数奇 耐詩
石津 正幸
肱岡 拓朗(ハイパーボイスマネージメンツ)
高橋 知宏
坂巻 寛治
美月 めぐみ
大野 陽子


とき
四月八日
A定食 十三時
B定食 十五時三十分
C定食 十八時
※開場は各三十分前開始
完全予約制各回定員三十名様
価格:各一人前千円(税込)

ところ
NPO法人スクール・アドバイス・ネットワーク特設会場
JR荻窪駅・徒歩七分
住所:杉並区上荻一の二十四の二十一 協立第51 ビル3F  (自然食品店「ころ」の三階)
※地下一階はライブハウスになっています。そちらとお間違えの無い様ご注意下さい。

予約・お問い合わせ
メールアドレス      mail@bakkaribakkari.com 
ホームページアドレス   http://www.bakkaribakkari.com/   

 以上が詳細でした。
 で、めげそうな原因はというと、これが、演出上のことなのです。
 私の所属しているもう一つの朗読劇団の方は、
視覚障害者が演じることが当たり前になっている劇団です。
こちらでは、最初に視覚障害者ありきだったため、
自然に動ける晴眼者と動きをつけられてもそれ自体が負担になってしまう視覚障害者が
同じ舞台上で演じる場合、多少の表情の変化以外はみな正面を向き、
動けない側に合わせて、ほとんど動きを入れない演出にしてくれていました。
 そのため、私は、「舞台上で動く普通の芝居は晴眼者と同じに動けない以上視覚
障害者は視覚障害者の役しかできないけれど、朗読劇ならどんな役でもやれるのだ。」
という信念を持ってしまっていたのです。
 ところが、今回の朗読会の稽古に入ってみて、それがとても甘い考えだったことに
気づかされてしまいました。
 私は、この劇団では、たった一人の視覚障害者、すごいマイノリティな立場だったわけです。
私の気持ちはさりげなく伝えていたつもりでしたが、演出の方針は変わらず、
これはもう諦めるしかないという感じになりました。
 どんどん動くメンバー達の中で、動けなかったり表情のコントロールすら他の人以上に
意識していないといけない私が、どんなコントラストで映るのかと思うと、
かなりめげそうになるのです。
 でも、自分で決めた道だから、なんとか頑張っていこうと思っています。
動けないなら、やはり話芸で勝負するしかありません。
 そんなことも含めて、皆さんにはぜひ、観に、聞きにいらしていただけたらと思います。
 ご予約お待ちしています。


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(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)

by amedia  at 16:00  | Permalink

平成17年度文化庁文化芸術支援作品 『ヘレンケラーを知っていますか』

“みんなちがってみんないい。” (金子みすゞ「私と小鳥と鈴と」より)
老女の過去が少年を救う。少年は老女を乗せて未来へ走る。それぞれの愛に向かって…

山口県が生んだ童謡詩人・金子みすゞの詩「私と小鳥と鈴と」の一節、
「みんなちがってみんないい」をテーマに、
盲聾の老女と生きる意味を見失った少年の偶然の出会いから始まる感動の物語。
山口県のある地方の雑木林の中に暮らしている、
目が見えず、耳が聞こえないという障害のある北崎絹子(小林綾子)。
ヘルパーの協力を得ながらも、一人で自立した生活をしている絹子の家に、
若い人生に終止符を打とうとしている山口祐介(登坂紘光)がやってくる。
盲聾者ではあるが、一人で何でも手際よくこなす絹子の生活ぶりや、
前向きに生きる魂にふれ、祐介は自分を見つめ直し始める…
監督は、ハンセン病、教育、障害者問題など、
一貫して社会に問い続ける作品を送り出してきた中山節夫。
主演の盲聾の女性には、NHKドラマ「おしん」で世界中に名を知られた小林綾子が扮し、
15歳から78歳までの役を演じぬく姿も見物。
下関弁で語られる暖かな表現と情緒あふれる町の風景が演出する、
生きる勇気と希望を教えてくれる心震わす感動の物語!

◆監督:中山節夫 ◆脚本:下島三重子
◆出演:小林 綾子/登坂 紘光/鈴木 重輝/左 時枝/倉野 章子/高橋 長英/夏八木 勲(特別出演)
◆企画・製作:映画「ヘレンケラーを知っていますか」製作委員会
(有)山口県映画センター/山口県シネクラブ協議会 
◆配給:H&Mインコーポレーテッド
2005年/日本/カラー/ヴィスタサイズ/105分  
3月24日(土) 銀座シネパトス他全国順次公開!!

by amedia  at 15:33  | Permalink

コインロッカー

わたしは週2回某Yスポーツ文化センターに水泳やトレーニングのため行っています。更衣室には、100円を入れて、使い終わると100円が戻ってくるコインロッカーがありまして、そこを使うわけですが、Yセンターは、健常者も使える施設なので、周りには若い人がたくさんいます。彼らは、ロッカーに鍵をかけないでそのままプールやジムに行ってしまいます。わたしら視覚障害の人間は、ロッカーのドアを開けて、手を入れないと、荷物を入れて良いかどうかわかりません。それが一つくらいならいいのですが、三つ以上そのような事があったりすると、第3者が見たときに「あいつどろぼうか?」などと言う声が出ないとも限りません。まだ幸いにしてそうなったことはないのですが、わたしは誰か人がいるときは、鍵をかけるように呼びかけています。みなさん、コインロッカーを使うときは、絶対に鍵をかけてください。盗難があっても、自業自得ですし、周りの利用者にも不快な思いをさせてしまうばかりか、場合によっては、出入り禁止になるかも知れません。

齋藤 勝利 様

by amedia  at 17:26  | Permalink

小学生の素朴な疑問

 学校も3学期に入り、小学校4年生のクラスに呼ばれ、点字の学習をするという
機会が増えています。
 先日も、杉並区のとある小学校の4年生のクラスにお邪魔して、点字講座を担当
してきたのですが、その際、「せっかくだから、点字のことだけじゃなくて、なん
でも聞いてね」というと、沢山の質問が飛び出してきました。

Q1 (給食の際の質問) 食べ物の位置はどうやって知るんですか?
A1 お皿の位置関係は触ればある程度分るし、お皿の中身は、時計の文字盤に例
えて説明してもらうととても分りやすいよ。

Q2 お皿が四角かったらどうするんですか?
 A2 四角い時計もあるよね?
 (うーん、なんてかわいい質問なんだ!)

Q3 見えなくて一番苦戦したことは何ですか?
A3 いろいろあるけどねぇ……、自転車に当て逃げされちゃって杖を折られたこ
ととか、点字表示も音声案内もないエレベーターにうっかり乗っちゃって誰も助け
てくれなかったときとかかな。

Q4 食べ物で苦戦した物はありますか?
 (みんな、「苦心」とか「苦労」と言わずに「苦戦」って言うのね。ゲームの影
響かな。面白い。)
A4 うーん、確かに食べにくい物はあるけどね、…そうだな、切り身とか刺身じゃ
ないお魚を食べるときかな。焼き魚なんか、骨が多いと困るね。

Q5 見えないと真っ暗なんですか
A5 人によっていろいろだと思うけど、私の場合は、真っ暗ではないです。視力
としては、明るいとか暗いってのもわからない全盲なんだけど、音で聞いてる状態
が、そのまんま目の前に映ってる感じ。校庭の元気な声が聞こえてるから、そっち
側が窓だと思えるでしょ?そしたら、私はそっち側が明るく感じるの。でも、本当
に、人それぞれだと思うよ。

 等等、率直な質問を沢山してくれて、純粋に理解しようとしてくれりているのが
伝わってきて、本当に心があったかくなり、こちらの方が元気になれる感じなので
す。
 話の合間に聞こえる「大変だなぁ」「かわいそうに」などという言葉にも、へん
な哀れみではなく、純粋な思いやりが感じられます。
 そして、最後に、こんな質問も出ました。

A見えなくて不幸だと思ったことは何ですか?
Q たまには嫌なこともあるけどね、大概の場合、幸せ不幸せは見える見えないと
は関係ないと思うよ。実際私は幸せだし。もちろん、不便なことは多いけど、それ
は不幸とは違うからね。みんなとこうして楽しい時間を過ごせるのは、とっても幸
せなことです。

 で、本日も、これから別な小学校にいって、いろいろなお話をさせてもらい、み
んなから元気をもらってくるのです。
 いってきまーす!!

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(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)

by amedia  at 10:32  | Permalink

医者の本分とは?

 先日、友人の出演する芝居を観るため、少し遠出をして、宇都宮線の某駅に降りました。
もちろん、芝居もそこそこ面白かったけれど、もっと印象的な話に出会うことができました。
 それは、芝居が始まる前にお昼を済ませてしまおうと入った小さなラーメン屋さんで、のことでした。
 このラーメン屋さんのおじさんが大変な話し好きで、ご自分の体験を話してくれたのです。
 このおじさん、片目が見えません。
でも、もう片方の目の視野だけで、160度もカバーできてしまうとか。
そして、若い頃、その見えない方の目をなんとか治療してほしいと思って、
当時素晴らしい眼科の博士がいたということで、J.K.大学付属病院を訪ねたそうなのです。
ところが、件の博士に見てもらえたと喜んだのもつかの間、
珍しい眼疾だということで大勢の研修医に見せて説明した後、
何の処置もせずに終わってしまったというのです。
おじさん、すっかりがっかりしてしまって、もう、目のことは諦めてしまったのだそうです。
 この話を聞いて、私の中でもくすぶっていた眼科への不満が、久しぶりに沸々と湧きあがってきました。
 私も、生後4ヶ月のころから中学2年の秋までの間に、左4回、右6回、計10回の手術を経ましたが、
結局は、完全失明してしまいました。仙台の大学病院での幼い記憶には、特に憶えていることはないけれど、
中学のときに手術を受けた東京の大学病院でのことならけっこう憶えています。
優しげな女性の担当医は、私に対してとても親身になってくれていました。
けれど、手術に関しての決断を下していたT博士は、どこか冷たくて、
自分がモルモットにでもなってしまったような気持ちにさせられたものです。
 また、眼科ではないのですが、私は他に、大変症例の少ない障害を持っています。
その手術のため、高校卒業寸前の3ヶ月くらいを、大学病院で過ごすことになったのですが、
このときにも、断わりはあったとはいえ、実験観察の資料用にするため、
裸身をいろいろな角度から撮影されたという経験があります。
 話を眼科に戻しますが、もう一つ疑問に思っていることがあります。
それは、整形外科なら、松葉杖の使い方を含め、日常生活に困らないようにするためのリハビリというのがありますが、
眼科で失明してしまったりしても、それにそうとうするリハビリがないということです。
いったい、どれほどの眼科医が、白杖を使った歩行のノウハウをご存知なのでしょうか。
点字が打てる先生は?いえ、そんな贅沢は言わなくても、
音声化ソフトを使ったパソコンについてご存知の先生は?また、見えなくなってしまった人の心のケアをできる先生は?
 眼科医本人でなくても、そういうカウンセリングや指導ができる職員を置いている病院はどれほどあるのでしょうか。
 医者って、元来、人の病気を治すものですよね。でも、治らなかったら?
 どうして病気を治そうとするかというと、患者の憂いを減らし、
快適に暮らせるようにしてあげたいからなんじゃないでしょうか。
それは言い過ぎ?でも私は、そうあってほしいと思うのです。
 だから、患部を治そうとすることだけでなく、もう少し視野を広げて考えてほしいと思うのです。
 ましてや、実験や観察の資料とかサンプルとか、そんな存在としてだけ見るような医者は、
なんとしても容認できないのです。
 そんなこんなの想いを噴出させた私は、このコラムを書くに当たって、少しネットで調べてみました。
そして分ったことは、以前と違い、少しは視野を広げている病院が増えてきているらしいということです。
まだまだ足りないと思うけれど、少しは明るい未来が見えるかなと思いました。
 詳しくは、こちらを覗いてみてください。

「視覚障害者リソース・ネットワーク」
http://www2.aasa.ac.jp/people/hkawash/VIRN/inst/LVclinic.htm

 片目だけ160度の視野を持つラーメン屋さん、辛い話なのに、なんだかとって
も元気に話してらしたのが印象的でした。
 え?ラーメンの味ですか?う~ん……。

ながら仕事でもホームページが楽しめる音声ブラウザ・ボイスサーフィン

(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)

by amedia  at 15:57  | Permalink