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春うらら
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小道具はダイソーで

 いよいよ、私の所属する劇団・演劇結社ばっかりばっかりの公演『さなぎの時代』の本番が近づいてきました。そんなわけで、来週のこのコラム欄は、私じゃない誰かが書いてくださることになりそうです。

 で、既に私の頭の中は芝居のことでいっぱいなので、今回もまた改めまして芝居関連のお話しです。

 実は、うちの劇団は極めて弱小劇団ですので、小道具担当なる物がいません。
 また、大掛かりな装置を組む大道具担当もいません。
 そんなわけで、一昨年上演した『だからこそ愛』も、去年の『トイメン』も、そして今回上演する『さなぎの時代』でも、実際の物を使わず、マイムといって振りだけで何かをしているしぐさを表現することが多いのです。
 ところが、普通の動作さえ晴眼者と同じとはいかない先天性の視覚障害者にとって、このマイムはかなりつらいものです。
 そこで、どうしてもはっきりとした対象物を見せたい場面も出てくるわけですが、そんなときの小道具購入に際しての強ーい味方が、百円ショップなのです。とりわけ、私の地元である町田には、「ギガダイソー」という5フロアーもあるダイソーがあるので、大変重宝しています。
 とはいっても、さすがに5フロアー全部が百円というのには無理があり、中には千円以上するような品物もあります。
 それでも、本来専門のお店で買ったらいくらかかるか分らないような物でも、大変安価で買えるので助かっています。
 今回の芝居の小道具については、いささかネタバレになってしまうのでここで触れるのはやめておきますが、『だからこそ愛』を例に取ると、運動会のシーンで使ったホイッスルやタンバリン、お葬式のシーンで使った菊の花の造花、りんごを剥くシーンで使ったまな板と果物ナイフとお皿とウェットティッシュなど、全て百均でした。
 こうして、ちょっとでもポイントになるところのシーンで使う物を用意できれば、日常生活とはほとんど変わりない状態で演じることができるので、視覚障害者が視覚障害者の役で舞台に立っている範囲ではとても楽に動けるようになるのです。

 今回は、食器類とねぇ…、おっといけない、これ以上は話せません。
 ということで、何をどんなシーンでどんなふうに使うのか、ぜひとも新宿・シアターミラクルまで足をお運びいただいて、その目で、その耳で確かめてみてください。

 チケットの予約状況ですが、おかげさまで7日14時の回が完売間近です。その他はまちまちで、中にはまだまだ寂しい回もあります。どうぞ皆様お早めにご予約いただけますようお願いいたします。

 それでは、以下に、公演詳細情報を貼り付けておきますので、宜しくお願いいたします。
 そして、私は、7日と8日、劇場で皆様のお越しをお待ちすべく、あと9日間、頑張って稽古に励みたいと思います。


演劇結社ばっかりばっかり 第五回公演『さなぎの時代』

 見えなくなった僕の前に現れたのは、一人の「物の怪」だった…

原作…杉森寿美「さなぎの時代」(『メディアナウ』連載)
脚本・演出…和風まくだ煮L
協力…響き工芸、点字あゆみの会、バリアフリー映画鑑賞推進団体CityLights、日本
盲人会連合
協賛…都立松が谷高校同窓会、(株)アメディア

日時…11月7日(土)・8日(日)
会場…新宿・シアターミラクル
   新宿区歌舞伎町2-45-2 カイダ第3ジャストビル4F(エレベータ有り

交通…西武新宿駅北口より徒歩1分、JR新宿駅東口より徒歩5分。
※ ご希望により、駅からの誘導をいたします。ご相談ください。
料金…前売り2500円、当日2800円、ペアチケット4000円(前売りのみ)

◆ストーリー
 『僕の目の前を覆うのは、上映開始前のスクリーンのような物なのだ。しかも、徹
夜明けで飛び込んだ映画館のそれのように、ぼーっと薄汚れている…』
 交通事故で失明した大学生悠希(ゆうき)。彼を包む闇ならぬ闇は、如何にして、
誰によって剥がされていくのか。
 全盲作家・杉森寿美(美月めぐみの別名)が描くハートウォーミングストーリーを
、座付き脚本家和風まくだ煮Lがコメディ仕立てで煮込んだ一品。
 視覚障害学生役者・大河内聡之、初主演作品!!

◆キャスト
大河内聡之
石津正幸
河村有美
こんやゆうこ
佐藤敏美
田中ゆかり
美月めぐみ
鈴木大輔

◆スタッフ
脚本・演出…和風まくだ煮L
脚本補・演出補…美月めぐみ
音楽…久保さとし・美月めぐみ
照明…中山仁(アートプラス)
音響…山脇葉
宣伝イラスト…キャンディーサトウ
車両…石津正幸
宣伝美術…こんやゆうこ
制作…こんやゆうこ

◆日程
11月7日(土)…14:00~  19:00~
   8日(日)…13:00~  18:00~
※ 開場は各公演開始時間の30分前です。

【お問い合わせ・ご予約先】
TEL 090-3818-6424
Eメール otegami@bakkaribakkari.net
 ご予約の際は、以下の内容をお知らせください。
お名前
枚数
観劇希望日時、
視覚障害者と晴眼者の人数の内訳
駅からの誘導希望の有無
誘導ご希望の場合は、西武新宿駅北口にするか、JR新宿駅東口にするか(高田馬場でも乗り換えやすいし、劇場までの距離も圧倒的に近いので、西部新宿駅をお勧めしてます)
当日緊急連絡の取れる携帯番号点字パンフご希望の有無もお知らせ下さい。(CDによる音声パンフは、視覚障害者の方全員に差し上げます)


 ※ アメディアは、美月の所属する劇団『演劇結社ばっかりばっかり』第五回公演
『さなぎの時代』に協賛しています。

結社ホームページ
http://www.bakkaribakkari.net/

目の見えない子を支援するなら~点字定規セット「点字サポーターへの道」

(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)

by amedia  at 16:41  | Permalink

五十肩とアトピー-痛みもかゆみも…

 この夏くらいに、アメディアのメーリングリストで「右の上腕が、後ろに回したり
遠くに延ばしたりすると痛くてたまらない」と相談したところ、それは五十肩ではな
いかと多くの人にアドバイスをいただきました。
 しかし、忙しさに取り紛れて病院に行かないでいるうちに、左の腕も痛くなってき
ました。これはいよいよ行かなくてはと、9月中ごろにようやく重い腰を上げ、整形
外科を受診しました。
 結果、優しそうなおじいちゃん先生が発した言葉は、「四十肩ですね」の一言でし
た。なーんだ、五十じゃなくて四十なら、ちょっと若いじゃん、と思って喜んで帰っ
てきてネットで調べてみたら、「五十肩は1960年代くらいまでは四十肩と呼ばれ
ていた」と書かれていました。ガーン!!やっぱり五十肩だったわけですね。

 結局両肩に注射を打たれ、塗り薬をもらってきたのですが、やっぱりある一定の動
きをすると、ブワーッと痛みが走り、筋肉が悲鳴を上げ、ついでに私も悲鳴を上げる
状態が続いています。これはもう、とほほとしか言いようがありません。

 一方、私の相方で演劇結社ばっかりばっかりの主宰である鈴木大輔は、小さい頃か
ら抱えている持病のアトピー性皮膚炎が、この時期になって悪化してきて、大変なか
ゆみにバリボリ状態なのです。夜も熟睡できず、集中力を持続させることも困難な状
況が続いています。
 塗り薬を強くすると、一時的に肌の状態が良くなりかゆみが軽減したりするのです
が、皮膚が薄くなり、ちょっとかいただけでも出血してしまいます。飲み薬の強いの
を飲むと、24時間ほど激しい眠気に捕らわれてしまいます。真夜中、いびきをかい
て完全に眠った状態のまま、激しくボリボリしている姿を見ていると、その計り知れ
ないかゆみがいかばかりの物なのかと、せつなくなってくるほどです。
 私たちのような普通の肌の者は、よく小さい頃から、「かゆいときにはかくと余計
にかゆみが強くなるからかかないようにしなさい」と言われたものですが、その理屈
は分かっていても、大の大人が人前でもかかずにはいられなくなる激しいかゆみとは
どんな物なのか、計り知れない物です。
 しかも、芝居のときには、それをぐっと堪えて長時間演じているのですから、これ
はもう尊敬せざるを得ません。

 腕の痛みに耐えている私、そして全身のかゆみと必死で折り合いをつけている彼。
お互いのつらさを、自分の経験による尺度では想像することはできないけれど、その
範囲を超えているのだと考えることで互いを思いやることができているのだと思いま
す。

 こんな風に、自分の経験してきたことの範囲で想像できないことは、人間同士いろ
いろあるものです。
 視力の強弱、聴力の強弱、体力の強弱、瞬発力、持続力、走る速度…そしてそんな
力の強弱があるなら、忍耐力、努力など、全てに人それぞれの持つ力というのがある
し、尺度もあります。

 じつは最近、アメディアのメーリングリストなどで、歩行能力に関する話題が盛り
上がっているようです。
 その中で、ガイドヘルパー制度の否定論が見受けられ、少し悲しく思ったので、今
回違う角度から「他人の痛みや持ちうる力の差と、それを思いやること」について書
いてみたくなったのでした。
 私は、たまたま自由を求める気持ちが強かったので、恐怖心に打ち勝つ力や自分の
姿を人に見られることや見知らぬ人に声をかけることに関する羞恥心やちょっとした
億劫さに打ち勝つ力を強化できて、一人歩きができるようになったわけです。でも、
その自由を求める気持ちが弱い人、またはその気持ちが強くなるようなきっかけに恵
まれなかった人にとっては、恐怖心と羞恥心の壁は本当に大きな物だと思います。
 また、一度は歩行能力を身につけた人でも、年齢や体力や判断力などの衰えにより
、人と一緒でないと歩けなくなってしまう人もいるでしょう。それがたまたま頼れる
友人の少ない人だったなら、やはりその人にとってはガイドヘルパーの存在は必要な
物なのだと思います。

 他人の痛みやかゆみは分からなくても、分からないなら分からないなりに、その向
こうにある程の物なのだと思いやれる気持ちを持ちたいものです。もしかすると、「
思いやり力」にも強弱は存在して、それはしかたのないことなのかも知れないけれど


 ※ アメディアは、美月の所属する劇団『演劇結社ばっかりばっかり』第五回公演
『さなぎの時代』に協賛しています。
 この芝居は、美月が別名義の「杉森寿美」として、10年前に本社発行の雑誌に連
載していた小説を舞台化する物です。
 同劇団では、チケットの予約を行なっています。
 詳しくは、
http://www.bakkaribakkari.net/
をご参照下さい。

ながら仕事でもホームページが楽しめる音声ブラウザ・ボイスサーフィン

(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)

by amedia  at 16:21  | Permalink

『新三銃士』を観ていて気づいたこと

 今週の月曜日から、NHK教育テレビで、久々に大型人形劇の放映が始まりました。アレクサンドル・デュマのあの名作を新感覚で人形劇化した『新三銃士』です。
 しかも、脚本を手がけているのは、『笑いの大学』の脚本や『ザ・マジックアワー』の脚本と監督を務めた三谷幸喜さんです。TVドラマの脚本でいうと「古畑任三郎」や大河ドラマ「新撰組!」を手がけた人です。
 声の出演は、語りに爆笑問題の田中裕二さん、アトス役に山寺宏一さん、アラミス役に江原正士さん、ポルトス役に高木渉さん(私の相方で我が演劇結社ばっかりばっかり主宰・鈴木大輔の養成所時代の1年先輩です)、ミレディー役に戸田恵子さんと、実に豪華メンバーです。
 また、エンディングテーマは、三谷さんが書いた詩に平井堅さんが曲をつけて歌った物です。
 もう、いやがうえにも期待が高まりました。
放送日は、1話~5話 10月12日(月)~16日(金)、6話~10話 10月19日(月)~23日(金)、11話~40話 毎週金曜 10月30日~平成22年5月28日、だそうです。時間は、18時~18時20分。

 というわけで、さっそく今週の月曜日の第1回から観ています。
 これは、期待以上の面白さで、もちろん聴覚的にはBGMも含めて大満足です。
 で、相方と一緒に観ていて、実に当たり前のことなのにあまり気に留めていなかったことに気づきました。それは、セットの中で動いているのは人形たちだということです。
 見える人たちと冷静な視覚障害者の人たちからは「何をいまさら」と言われそうですが、画面の情報を言葉で補ってくれていた相方が発した「ほほう、これは凄い!よくできてるなぁ!」との一言で、ふと我に返り、「そういえば、これ、人形劇だったんだぁ!」と再認識させられたのでした。
 思えば、小学生の頃、『新八犬伝』や『真田十勇士』にはまり、中学生の頃は『三国志』に夢中になっていた私は、言葉では人形劇だと思っていても、耳から入るストーリーにすっかり引き込まれるあまり、人形が動くビジュアルを想像することはなかったのでした。
 しかも、どの作品でも、数多くの登場人物の声は、限られた声優さんたちが一人何役もこなして演じているのに、まったく違和感がないのです。
 今回も、上に挙げた声優さんたちが、本当に一人何役もなさっています。今は、一部の友人から『声優の声だけはすぐ判るオタク耳のダメ絶対音感』と言われる能力を備えてしまったので、どんなガヤ(その他大勢の群集など)の声でも誰が演じているのか判ってしまうのですが、それでもストーリーには十分のめりこむことができています。

 声優というのは、何かの動きに声を合わせて演ずることが多いので、普通のドラマに比べて、ちょっと大げさに演じることが多く、「声優さんだな」と判る独特の演技があります。
 人形劇のときにもその傾向はあり、本職の声優さんではない俳優さんたちがキャスティングされてもやっぱりそんな風に聞こえます。
 ちょっと違いはあるけれど、うっかりぼんやり聞いているとアニメと同じように感じてしまうこともあります。
 それでいうと、人外の物がいろいろ出てくる特撮物などでも、アニメだと思い込むこともありました。小学生の頃に放映されていた『ロボコン』などは、その最たる物で、今の相方と一緒になりいろいろ特撮について話している中で初めてあれが特撮だったということを知ったのでした。ちなみに、この『ロボコン』をアニメだと思い込んでいた視覚障害者は、私以外にもけっこういたようです。

 このように、耳で馴染んでいる物の中には、視力がないがゆえに勘違いしていること、基本を忘れていることはあるものです。
 また、日常生活の中で接することのない物を想像することも困難なことが多いです。こんなことは、普通の生活をしている上では特に不便でもないことなのですが、ちゃんと認識していないと、それが小さなバリアになります。一般的な共通認識に置いていかれ、ひいては「見えない人は、勉強ができたとしても、物を知らない」なんていうふうに誤解されてしまいかねない要素ともなります。
 想像力を鍛えていくことは大事ですが、それだけではなく、見える家族・友人たちといろいろ語り合って、自分の知識をより確実にしていくことはとても大事だし、楽しいことだと思います。
 また、機会があれば、日常生活の中では触れないような物には積極的に触って、その形を認識していきたいものです。
 私も、相方とたくさん話して、もっともっと知識を高めていきたいと思っています。もちろん、お返しに、私が知っている知識もたくさん伝えていきたいと思っているのですが。

 さて、人形劇の人形たちに触る機会が、いつかおとずれないものでしょうか。
 『新三銃士』、今日の放送もとても楽しみにしている美月でした。

※ 『新三銃士』、今からでも遅くないので、こちらでストーリーを読んで、ご鑑賞ください。
http://www.nhk.or.jp/sanjushi/


 ※ アメディアは、美月の所属する劇団『演劇結社ばっかりばっかり』第五回公演『さなぎの時代』に協賛しています。
 この芝居は、美月が別名義の「杉森寿美」として、10年前に本社発行の雑誌に連載していた小説を舞台化する物です。
 同劇団では、チケットの予約を行なっています。
 詳しくは、
http://www.bakkaribakkari.net/
をご参照下さい。


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(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)


by amedia  at 15:54  | Permalink

読書案内 -坂木司作「引きこもり探偵シリーズ」-

 物凄い台風でしたね。
 被害に遭われた地域の皆さん、心よりお見舞い申し上げます。

 さて、今回は読書の秋にお薦めしたい小説をご紹介したいと思います。ミステリーをほとんど読まない私が、あっという間にはまり込んでしまったミステリーです。
 坂木司(さかき つかさ)さんという作家の方が書かれた、『青空の卵』『仔羊の巣』『動物園の鳥』の3作から成る「引きこもり探偵シリーズ」です。

 ミステリーファンの中には不満に思われる方もおられるかもしれませんが、このシリーズでは殺人事件は起きません。でも、放っておいたらどうなったかとひやりとさせられるようなことは多少あります。それを未然に解決してしまうところが、このシリーズの優しさでもあると、私は思うのですが。

 外資系の保険会社の営業担当をしている青年・坂木司の一人称形式で書かれるこの小説の主役は、本人ではなく、その相方の青年鳥井信一(とりい しんいち)です。
 鳥井は、コンピュータプログラマーとして自立した生活を営んでいますが、じつは強度の引きこもりで、親友である坂木が一緒でなければ近所での買い物さえできません。しかも、抜き身のナイフみたいに他人を傷つける危険性のある言葉を放つくせに、自分自身も物凄く傷つきやすい。そんな鳥井が唯一心を許し、大切に思っているのが坂木なのです。
 そして、坂木はといえば、この上ないお人よしで心優しい人物です。彼の願いは「誰もが笑顔でいられること」です。
 この対照的な二人が、どうして唯一無二の親友になったのか、鳥井がどうしてこんな精神を抱えることになったのか、といった物語の根幹に関わることがらを少しずつ描きながら、近所で起こる人間臭い出来事を解き明かしていく幾つかの物語が綴られていきます。
 解き明かすのはもちろん「引きこもり探偵」こと鳥井です。彼はマンションの一室にいて、坂木が持ち込んでくる厄介事を、鋭い洞察力と分析力であっという間に解決に導いていきます。
 また、鳥井は、引きこもってはいますが、探偵物にありがちなぐうたら探偵ではなく、とてもまめな人間で、特に料理の腕は並外れています。食いしん坊の私などは、ぜひとも鳥井の部屋にお邪魔して一口お相伴に預からせていただきたくなってしまいます。

 ここまでご紹介したところでも面白さはある程度伝わっているかもしれませんが、このシリーズの面白いところは他にもいろいろあります。
 代表的なところでは、この物語ではそれぞれの事件の中心人物となった人が、当たり前にその後も良い味の脇役として残っていくことです。しかも、その脇役たちの中には、いつの間にか鳥井の食卓に座るはめになっている人物もいたりするのです。
 きっと、「ズボシ」という抜き身のナイフで切りつけて膿を出す鳥井と、その傷口を優しく縫合して包んでしまう包帯のような坂木の名コンビが、関わる脇役たちを癒しているからなのかもしれません。

 また、1作目の『青空の卵』から登場する中途失明の青年がいるのですが、彼を巡る様々な事柄を読んでいると、作者の坂木さん自身、ちゃんと視覚障害者と関わったとしか思えないほど、よく描かれているのです。これには本当に驚かされました。
 いったい、坂木さんという作家さんはどんな人なのだろうと、物凄く興味が湧いたのですが、残念ながらこの人、顔はおろか、性別さえ公表していない覆面作家さんなので、その正体はようとして知れないのです。自身の書いた作品の登場人物の名前をペンネームにしている坂木さん其の人こそが最もミステリアスな存在のようです。

 このシリーズを先に読んでいたうちの相方は、既に他の作品も読んでいるのですが、「いずれもアタリ」とのことなので、暫くはこの作家さんの作品を追いかけてみようと思っているところです。
 ちなみに、私が最初に読んだ『短劇』という短編集も、いろんな色の作品がいっぱい入っていて、とても面白かったので、長編が苦手な人にはこちらをお薦めしておきたいと思います。

 今回ご紹介した、『青空の卵』『仔羊の巣』『動物園の鳥』『短劇』は、いずれもないーぶネットでダウンロードできますので、視覚障害者の皆さんもぜひ読んでみてください。


ながら仕事でもホームページが楽しめる音声ブラウザ・ボイスサーフィン


(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)

by amedia  at 17:15  | Permalink

可動式ホーム柵の重要性-尊い命を護るため(後編)

 前回お話ししたように、視覚障害者に限らず、多くの人々のために、可動式ホーム柵は必須アイテムなのです。

 ところが、設置に際してネックになることが幾つかあります。
 一つは、路線によっては車両の数の違う編成の電車が混在していること。私の住んでいるところの最寄である小田急線もいろいろ走っていて、各駅停車しか止まらない最寄駅では、ホームのアナウンスに耳を傾けていないと、思いどおりのところに乗れないこともあります。各停が6両と8両、準急は10両なのです。
 ただし、これは素人考えですが、もし可動柵を設置するなら、必ず頭を合わせるように停車させればなんとかなるのではないでしょうか。
 最近、嬉しいことに、可動柵のドアの脇に、点字で車両番号とドア番号が貼られている路線も増えてきましたが、頭をそろえるようにしておけば、その表示もそのまま生かせます。
 二つ目のネックは、可動柵のドアと車両のドアを上手く合わせて開くこと。自動制御が可能なところも多いようですが、運転手の技術に頼っているところもまだまだ多いようです。
 そうなると、駅に到着した電車の停車位置の微調整、乗降客の完全な入れ替わりを
確認してのドアの開閉など、気を遣わなければならないことがいっぱいあります。
 それで、今までは乗降客の多い駅や路線では可動式ホーム柵の導入は難しいとされてきたのですが、気づいてみれば東京メトロ丸の内線という、都内の地下鉄では最も乗降客数が多いような路線に、全駅設置されていたのです。
 また、前回もご紹介したように、あの…、あの“山手線”に、8年越しで可動式ホーム柵を設置する予定だというのですから、驚いてしまいます。
 もう、そのあたりのことはあまりネックにはならないのかなと思っているのですが、運転手が全て操作するだけで、駅員の配置を無くしてしまおうということで自動かも進んだ結果として実現しているというのは、何か少し本末転倒のような印象もあります。
 「ドアに挟まっちゃったらどうするの?」「押されて転んじゃったらどうするの?」
 やっぱり心配事は尽きません。
 可動柵があった上で、きちんとホーム上の安全性を見守る駅員さんの存在は、欠くべからざるものだと激しく思うのです。
 意味合いは違うけれど、夜更けの地下鉄の駅などは、見えていても怖いと感じる女性は少なくないと思います。
 可動柵が増えることは大変歓迎すべきことではありますが、それによってホーム上の駅員さんがいなくなってしまうのは、本当に困ることです。
 で、そのいなくなった駅員さんは、いったいどこに行ってしまうというのでしょうか?
 時間を厳守すること、少しでも早く移動できる手段としての電車を追求することに血道を上げ、戦々恐々としている鉄道会社は、利用客の安全性をどんな風に考えているのでしょうか。

 でも、ここでもう一つ考えなければならないことがあります。
 そんな鉄道会社の体質を生み出したのは、いったい誰でしょう。
 小田急線の遅延は最近では日常茶飯事ですが、せかせかしていない私にとっては、3分とか5分の遅れはさほど気になるものではありません。
 でも、この春頃だったと思いますが、都心に向かって乗り込んだ電車の中で、嫌なことに出くわしました。私は連れと一緒に一番後ろ、つまり車掌さんに近いところに乗っていたのですが、隣駅でそこへ乗り込んできた30代中ごろと思しきサラリーマン風の男性が、6分の遅れについて延々と車掌さんに文句をたれているのです。言いたいことだけ言った男性は、平謝りしている車掌さんを尻目に前の車両のほうに移動していきました。ほっとして気づいたのですが、この駅は後ろ寄りには改札が無く、後ろのほうが便利だという人意外は普通はこんな後ろに乗り込んだりはしません。しかもこの男性は、言うだけいうと前の方へ移動した。つまり、文句をぶちまけるためだけに、車掌さんのところにきたのでした。
 彼がどんな仕事を抱えていたのかはわかりません。でも、6分遅れて困るくらいなら、なぜ20分くらい早く出かけてこられなかったのでしょうか。そして、6分を争うほどに彼を急き立てていた先方にはどんな人が、どんな用事が待ち構えていたのでしょうか?そして、遅延の原因になったわけでもない車掌さんは、小田急という会社全てをその肩に乗せたように平謝りしながら、どんなに傷ついていたことでしょうか。

 キリギリス生活の舞台役者ふぜいの私が論じるのは大変におこがましいとは思いますが、世の企業戦士たちはあまりにも時間に縛られすぎてはいないでしょうか。
 過労死してしまうほどの過酷なサービス残業に追われているサラリーマンやOLたち。その一方で就職難だとかニートだとかの問題が山積している今の世の中、あまりに偏っていすぎるんじゃないでしょうか。
 もっと人を雇用して、加重の大きすぎる企業戦士たちを楽にしてあげられないものでしょうか。ニートに甘んじている人たちだって、がんじがらめに働かされている人々をみて、恐れを成してしまうのではないでしょうか。
 もっと多くの人たちがゆったりと仕事に就けるようになり、お金が多くの人に行き渡っていけば、定額給付金の配布なんかよりずっと「金が天下を回る」ことになるのではないんでしょうか。

 責任の重さや過労を苦に、あるいは仕事に就けないことを苦に、今日もまたどこかで誰かが“人身事故”を起こしているかもしれません。しょっちゅうです。本当にしょっちゅうそんな事故が起こり、電車が止まり、人々はイライラを募らせ、その怒りは別な同僚や部下に向けられ、そして新たな犠牲者が……!
 残念ながら、私は経済学にも政治学にも経営学にもトンと疎い人間です。だから、だれがいつどこでどうやってこの悪循環の糸を断ち切ればいいのか、考えても考えても、結論が出てきません。でも、とにかく、この偏った時間に追われるこせこせした社会を、ドッテーンとひっくり返したい気持ちでいっぱいになるのです。

 可動式ホーム柵のことを考えているうちに、そんなどうしようもないことまで考えが及んでしまい、ついつい長文になってしまいました。
 無知ゆえの暴言も多々あったかと思います。どうぞご容赦ください。そして、できれば読者の皆さん、とりわけ鉄道に詳しい皆さんからのご意見をたくさん伺えればと思います。

(おわり)


 ※ アメディアは、美月の所属する劇団『演劇結社ばっかりばっかり』第五回公演『さなぎの時代』に協賛しています。
 この芝居は、美月が別名義の「杉森寿美」として、10年前に本社発行の雑誌に連載していた小説を舞台化する物です。
 同劇団では、チケットの予約を行なっています。
 詳しくは、
http://www.bakkaribakkari.net/
をご参照下さい。


目の見えない子を支援するなら~点字定規セット「点字サポーターへの道」


(「週刊福祉情報」コラムニスト・美月めぐみ)


by amedia  at 17:59  | Permalink